日曜日, 6月 22, 2014

ベルリオーズ 幻想交響曲

ベルリオーズ;幻想交響曲 (Berlioz: Symphonie Fantastique)


ベルリオーズの伝記(『小説ベルリオーズ』ジャン・ルスロ著, 横山 一雄訳 音楽之友社1975)を読むと「幻想交響曲」の生成過程がよくわかる。ワーグナーほどではないが、この人も相当、波瀾万丈の生き様をのこしている。彼の人生は「恋愛と恋愛の苦悩にほかならなかった」(ロマン・ロラン)というのもうなずける。

イギリスの女優ハリエットへの熱愛、挫折をへて後のベルリオーズの社会的成功とともに、思いが叶い幸福の絶頂となるが、実はこれが生涯の心労のはじまり。後半生、男女愛憎乱れる複雑な人間関係に発展していくことになる。作品が作曲家の実生活と関係しているかどうかは、音楽を聴くうえでさして重要でない場合も多い。しかし、標題音楽をかかげ一種の私小説的なストーリー性をもった「幻想交響曲」の場合は別である。あのなんとも魔的でおどろおどろしい世界は、毒をふくんだような強烈な刺激をもっているし、ベルリオーズの創作の秘密(懊悩をスコアにぶつける方法論)もそこにあると言ってよいと思う。
 

ベルリオーズ:幻想交響曲
 
<以下はかつて書いた文章>
 
「幻想」での悲恋はその後、紆余曲折をえて実り、ベルリオーズは憧れのハリエット・スミスソンと結ばれる。しかし、実はここからが新たな男女の縺れのはじまりであり、 ベルリオーズは社会的な名声をえる一方でスミスソン、そして若い愛人との婚姻、恋愛関係では一生悩むことになる。つまり、「幻想」はその後現実に雲散霧消したのではなく終生、ベルリオーズにメフィストのように纏わりつくのである。 彼は死の床で第5章を反芻していたかも知れない。

Sunday, June 02, 2013 幻想交響曲


 

ベルリオーズ:幻想交響曲、ドビュッシー:交響詩「海」 (Berlioz: Symphonie fantastique / Debussy: La Mer) [14/11/1967] [日本語解説付]


さて、その「幻想交響曲」をいかに演奏するか。シャルル・ミュンシュの書いた『指揮者という仕事』(福田 達夫訳、春秋社1994)は、この点でとても参考になる本である。ミュンシュは、ある意味、気まぐれで空ろぎやすい聴衆に、いかに音楽を聴かせるかに意を砕くが、「彼は音楽のドラクロアであるが、それは彼が厳密な計画にしたがって組み立てているからではなく、大きな色斑をまき散らした大壁画(フレスク)によってやっているからだ。すべてが自然よりも壮大であり行き過ぎている」(p.73)と言う。

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<以下はHMVからの引用>

1967年、フランス文化相アンドレ・マルローの提唱により創設されたパリ管弦楽団は「諸外国にパリおよびフランスの音楽的威信を輝かすこと」を使命とされた、まさにフランスが世界に誇ることを目指したオーケストラでした。その初代音楽監督に選ばれたのが、70歳を越えたフランスを代表する指揮者、シャルル・ミュンシュ。この『幻想交響曲』はミュンシュが最も得意とした曲のひとつであり、パリ管弦楽団の記念すべき最初の演奏会での演目。熱のこもった力溢れる名演です。
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当時、アンドレ・マルローの威令はゆきとどき、小生もご多聞にもれず流行していた彼の小説を何冊か読んだ(いまはほとんど内容を忘れているが、人の顔の抉るような描写のうまさに感心したことだけは覚えている)。
マルロー閣下主導、鳴り物入りのパリ管だったが、結果的にミュンシュは無理がたたり命を縮めてしまったような気がする。1967年の「幻想」はまさにパリ管への悲しき置き土産となった。
この演奏は、けっして「美しく」はない。むしろ、ベルリオーズのもつおどろおどろしさも垣間見えるし、腺病質的な危うさもときに顔をだす。「幻想」のもつ複雑な心理描写をトータルとしてもっとも的確に表現しているように思う。
 ボストン時代から手中の演目だが、ミュンシュは録音にあたって吟味し直し考えぬき、表現しつくしてやろうとの気概のようなものを感じる。
なお、パリ管への管弦楽の統制は緩めで、パート演奏がややデフォルメされる傾向もある。ここを次に音楽監督についたカラヤンは気にいらず鍛えなおしたエピソードは有名。その意味では、ミュンシュ/ボストン響の完成度の高い演奏を第一とする見方もある。
 
Berlioz;Symphonie Fantastique
 
「幻想交響曲」は指揮者にとってもオーケストラにとっても魅力的な演目である。その色彩感覚をどう表現するかには腕がなる部分もあろう。そこで、忘れられないのがマルケヴィッチである。
 

半世紀近くも前だが上野の東京文化会館のブースで、本演奏をリクエストし一人聴きいり、はじめて「幻想」という曲の凄さを知った気がした。195311月、残響豊かなベルリン・イエスキリスト教会でのモノラル録音。当時としては音の解析がクリアで、いま聴いても変わらぬ名演としての一種の<威容>がある。マルケヴィッチは作曲家としても、オーケストラ・ビルダーとしても高い能力をもっていたようだが、鬼才ベルリオーズの斬新な作風、特異の感受性をベルリン・フィルから見事に引き出しここに横溢させているように思う。

激しいパッショネイトな後半の「断頭台への行進」や「サバトの夜の夢」は誰が振っても相応な感動があるはずだが、マルケヴィッチの鋭い解析力がはっと実感できるのは、むしろ前半の「夢、情熱」や「野の風景」の緩やかな微音部分かも知れない。1度だけ実演に接したこともあるが、痩躯な横顔と長い指揮棒がマッチし指揮棒の先の震えるような動きが印象に残っている。録音のよい「幻想」のディスクはあまたあるが、鋭き解釈において後世の指揮者にこのマルケヴィッチ盤のあたえた影響は蓋し大きかったろう。誉れ高き、先駆的な名盤である(なお、同コンビによる代表的な成果としてハイドン:オラトリオ「天地創造」も推奨)。

ベルリオーズ:幻想交響曲
 
最後に「幻想」の先駆性にはいつも驚く。ベートーヴェンと一部同時代に生きていたのだが、第2楽章ではベートーヴェン初期交響曲を、第3楽章は6番を、第4楽章は7番の強烈なリズム感を連想させる。その一方、循環動機、先進的な管弦楽法(彼は近代作曲家として初の理論書も書いている)と大胆なオーケストラの起用では、パガニーニ、リスト、ワーグナーらに与えた影響は絶大である。


【ベルリオーズ 幻想交響曲】


 
【織工 の選ぶ 幻想交響曲 10選】

金曜日, 6月 20, 2014

ミュンシュ



オネゲル:交響曲第2番&第5番「3つのレ」、ルーセル:バッカスとアリアーヌ第2番【Blu-spec CD】
オネゲル:交響曲第2番&第5番「3つのレ」、ルーセル:バッカスとアリアーヌ第2番
 
交響曲第2番は、第二次世界大戦中に作曲されたもので、戦争の悲惨さ、絶望感が表現されていることから、戦時映像のバックで流されることもある曲。執拗なテーマの繰り返し、陰惨な曲想、一貫した緊張感の醸成に特色がある。第3楽章の最後にトランペットが用いられるが基本は「弦楽のための交響曲」であり、弦楽五重奏曲の拡大版を聴くような感じ。ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管で、コンサートマスターを務めていたミュンシュならでは、弦楽器の使い方の巧みさ、各楽器の音色の奥深い響きは、この曲でも十分生かされている。 

交響曲第5番『三つのレ』(全3楽章がレ(ニ)音で終わる)は、ミュンシュ/ボストン響によって1951年に初演された(本盤は翌年の録音)。第2楽章に十二音技法が用いられているということでも知られるが、リズミックさが強調されているため、あまり意識されない。

ルーセル「バッカスとアリアーヌ」はバレエ曲らしい華やかさがあり、お口直し的に明るく力強いエンディングである。ミュンシュらしい快演。

Berlioz: Symphonie fantastique
http://www.amazon.co.jp/Berlioz-Symphonie-fantastique/dp/B0078OC0WW/ref=sr_1_18?s=music&ie=UTF8&qid=1403275781&sr=1-18

ミュンシュ/ボストン交響楽団による『幻想交響曲』『イタリアのハロルド』『夏の夜』の2枚組。『幻想』ではマルケヴィッチやベイヌムも良い演奏だが、ミュンシュのちょっと真似のできないスケール感はやはり大書しておくべきだろう。

構えが大きく立派で、全般の運行早く軽快なテンポを保ち、熱っぽく汗が迸るような演奏であることがミュンシュの特色である。

クラシック音楽を聴きはじめた頃、1968116日にミュンシュは逝去した。直後の11日に追悼記念コンサートのテレビ放映があり、その演目は『幻想』であった。当時は、こうした映像自身がめったに紹介されることがなかったから、この貴重な記録を食い入るように魅入った思い出がある。他の2曲は下記データのとおりだが定評ある名演。 

【収録内容】
 
◆『幻想交響曲』

 録音:195411月 ボストン・シンフォニー・ホール(2トラック録音)

◆交響曲『イタリアのハロルド』

 ウィリアム・プリムローズ(va

 録音:1958331日 ボストン、シンフォニー・ホール(3トラック録音)

◆歌曲集『夏の夜』

 ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレス(ソプラノ)

 録音:1955412,13日、ボストン、シンフォニー・ホール(MONO
 

ベルリオーズ : 幻想交響曲 | ドビュッシー : 「海」 他 (Stravinsky : Requiem Canticles | Debussy : La Mer | Berlioz : Symphonie Fantastique / Charles Munch | Orchestre de Paris) (1967 Paris Live) (2LP) [Limited Edition] [Analog]

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5
 
 晩年のパリ管との関係、特にフランスものの秀演(上記はその代表作「幻想」など)があまりにも有名だが、ドイツ音楽の正統を継ぎ、かつ黄金時代は、手兵ボストン響との名コンビで全米はもとより世界で鳴らした。    

 本選集ではこれに加えて、メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲では、ハイフェッツと、ブラームス/ピアノ協奏曲第2番ではルービンシュタインとの共演を聞ける。どの演奏も大筆で一気に揮毫するような迫力があるけれど、けっして大味ではなく全体の構成が自然でいささかも崩れていない。     

 特に得意のブラームスの熱気は凄いし、普段あまり聞くことのないシューベルト/交響曲第2番なども実に楽しく飽きずに聴くことができる。

 
【収録内容】

CD1:メンデルスゾーン/交響曲第3番『スコットランド』、ヴァイオリン協奏曲ホ短調[v.ハイフェッツ]、華麗なるカプリッチョ ロ短調[p.ゲイリー・グラフマン](録音/1959年、1960年ステレオ)

CD2:同上/交響曲第4番『イタリア』、同第5番『宗教改革』、弦楽八重奏曲変ホ長調~スケルツォ(録音/1958年、1957年、1960年)

CD3:ブラームス/交響曲第1番、悲劇的序曲(録音/1956年、1955年)

CD4:同上/交響曲第2番、同第4番(録音/1955年、1958年)

CD5:シューベルト/交響曲第2番、ブラームス:ピアノ協奏曲第1[p.ゲイリー・グラフマン](録音/1960年、1958年)

CD6:同上/交響曲第8番『未完成』、同第9番『グレート』(録音/1955年、1958年)

CD7:シューマン/交響曲第1番『春』、『マンフレッド』序曲(録音/1959年)

CD8:同上/『ゲノヴェーヴァ』序曲、ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調[p.ルービンシュタイン](録音/1951年、1952年のみモノラル)
 
Charles Munch Conducts Romantic Masterwo
 
交響曲第1番、悲劇的序曲 ミュンシュ&ボストン交響楽団(限定盤)
 


 
Classique-La Discotheque Ideale
 
クラシック音楽 聴きはじめ 2
 
Great Conductors of the C20th Ⅰ
http://blog.livedoor.jp/shokkou/archives/2013-09.html