水曜日, 8月 01, 2012

初期 カラヤンを聴く

初期録音集

初期カラヤンの録音について、以下、そのいくつかを添付します。

Maestro Vol. 1: Herbert von Karajan [Box set, Import, from US]

カラヤンの主として50年代のフィルハーモニア管弦楽団との演奏。モノラルながら聴きやすい録音。今日聴いても、その明確な解釈、快速な運行、品位ある抒情性に感心する。特にウイーン・フィルとのベートーヴェン「第九」、ヴェルディ「レクイエム」は迫力にあふれた出色のもの。
 40年代のコンセルトヘボウとの共演も興味深く、ブラームス交響曲第1番や「サロメ」でのカラヤンは溌剌とし実に巧い。
協奏曲では相性のよいギーゼキングとベートーヴェンの4,5番、グリーグなどを収録。録音こそ古いが、いずれもこの価格では文句なし、粒ぞろいの名曲・名演集となっている。

【収録情報】

<モーツァルト> 

・交響曲第35番、第40番(RAIトリノ管弦楽団/194210月),

・『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』(ウィーン・フィル/194610月)

<ベートーヴェン>

・交響曲:第3番(195211月)、第7番(195211月)、第8番(ウィーン・フィル/194611月)、第9番(シュヴァルツコップ(S)、エリーザベト・ヘンゲン(Ms)、ユリウス・パツァーク(T)、 ハンス・ホッター(Bs)、ウィーン楽友協会合唱団、ウィーン・フィル/194711,12月)

・ピアノ協奏曲:第4番、第5番(ギーゼキング(p/19516月)

・『レオノーレ』序曲第3番(コンセルトヘボウ/1943年)

<ブラームス>

・交響曲第1番(コンセルトヘボウ/19439月)

<ヴェルディ>

・レクイエム(ヒルデ・ザデク(S)、マルガレーテ・クローゼ(C)、ヘルゲ・ロスヴァンゲ(T)、ボリス・クリストフ(B)、ウィーン楽友協会合唱団、ウィーン・フィル/1949814日、ザルツブルク[ライヴ])

R.シュトラウス>

・『ばらの騎士』~“Herr Gott im Himmel”(シュヴァルツコップ(S)、イルムガルト・ゼーフリート(Ms)、ウィーン・フィル/194712月)

・『サロメ』~7枚のヴェールの踊り(コンセルトヘボウ/19439月)

<シベリウス>

・交響曲第5番、『フィンランディア』(19527月)

<その他>

・フランク:交響的変奏曲(ギーゼキング(p/19516月)

・グリーグ:ピアノ協奏曲(同上)

・ストラヴィンスキー:『かるた遊び』(19525月)

・バルトーク:管弦楽のための協奏曲(19536月)


Karajan [Import, from UK]
   カラヤンの1950年代前半を中心とする10枚のモノラル録音集。このシリーズではクレンペラーのセットを購入して大いに満足。溌剌とし、スピード感あふれるこの時代の斬新なカラヤンの演奏は魅力。すでに全体の半分以上は持っているが、熟慮のうえ本集も購入することにした。下記ラインナップのうち、コンチェルト・ファンなら妙味あるグールドの3番ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3&シベリウス:交響曲第5番ほかデニス・ブレインのホルン協奏曲集Horn Concertos Nos 1-4 / Quintet K452だけで十分に元がとれる。オペラ・ファンなら「モーツァルト:歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」(シュワルツコップ/カラヤン)」に食指が動こう。

<収録情報>(録音時点)

CD1

・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番(1957年)グレン・グールド(ピアノ)、ベルリン・フィル

・バルトーク:ピアノ協奏曲第3番(1954年)ゲザ・アンダ(ピアノ)、R

CD2

・モーツァルト:クラリネット協奏曲(1955年)バーナード・ウォルトン(クラリネット)、P

・モーツァルト:ホルン協奏曲第1番、第4番(1953年)デニス・ブレイン(ホルン)
、P

CD3

・モーツァルト:ホルン協奏曲第2番、第3番(1953年)同上

・ブラームス:ピアノ協奏曲第2番(1954年)ゲザ・アンダ(ピアノ)、R

CD4

・ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱』(1954年)テレサ・シュティッヒ=ランダル(ソプラノ)、ヒルデ・レッセル=マイダン(メゾ・ソプラノ)、ヴァルデマール・クメント(テノール)、ゴットロープ・フリック(バス) R&合唱団

CD5

・ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』(1953年)P

・シベリウス:交響曲第4番(1953年)P

CD6

J.シュトラウス:喜歌劇『こうもり』序曲(1955年)P

R.シュトラウス:歌劇『ナクソス島のアリアドネ』~プロローグ(1954年)P

・ビゼー:カルメン組曲(1954年)ウィーン交響楽団

・ワーグナー:『ニュルンベルクのマイスタージンガー』~第1幕への前奏曲、第3幕への前奏曲(1951年) バイロイト祝祭管弦楽団

・モーツァルト:歌劇『魔笛』序曲、僧侶の行進(録音時期:1953年)P

・フンパーディンク:歌劇『ヘンゼルとグレーテル』前奏曲集(1953年)P

CD7

・ブルックナー:交響曲第8番(第2楽章~第4楽章)(1944年)プロイセン国立歌劇場管弦楽団

CD8-CD10

・モーツァルト:歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』全曲(録音時期:1954年)

 エリーザベト・シュヴァルツコップ(フィオルディリージ)、ナン・メリマン(ドラベッラ)、レオポルド・シモノー(フェルランド)、ロランド・パネライ(グリエルモ)、セスト・ブルスカンティーニ(ドン・アルフォンソ)、リザ・オットー(デスピーナ)P&合唱団
http://www.amazon.co.jp/Karajan-Vol-10/dp/B004JL2VU8/ref=cm_cr-mr-title

(注)P:フィルハーモニア管弦楽団、R: RAIローマ交響楽団

 



さらに遡っての3枚を添付します。いずれも天才の閃きを感じさせます。

Herbert von Karajan : The Early Recordings (1938-1946)
  「運命の力」序曲(19382月)、「マイスタージンガー」第1幕前奏曲(1939年2月)、「モルダウ」(19406月)、「セミラーミデ」序曲(194210月、トリノ)、「魔弾の射手」序曲(1943913日、アムステルダム)を所収。最初期5年のカラヤンの録音群であるとともに、4つのオケとの共演を3つの主要都市(記載がないものはベルリン)で行っている。
ほかにも「魔笛」序曲(1938129日)、「アナクレオン」序曲(19394月、いずれもベルリン)なども別の音源で聴くことができるHerbert von Karajan (Early Recordings Volume 1 1938 - 1939)
SP復刻ながら演奏の内容が十分わかる水準の録音だろう。冴え渡った解釈、しかし上質のデリカシーも内在した演奏で、「運命の力」序曲は折々に聴いて、その都度胸に響き感心する。「モルダウ」のファンタジー、「魔弾の射手」の神聖な森のイメージ、どれも目くるめく多彩な表現で飽きさせない。それに比べると「魔笛」と「アナクレオン」は手堅い巧さが少し前面にでているようにも思う。

Herbert von Karajan (Early Recordings Volume 1 1938 - 1939)
  1939年4月15日、ベルリン・フィルとの録音(チャイコフスキーの交響曲ではカラヤン、現存する最初の録音記録)。ベートーヴェンの交響曲では、19416月、ベルリン国立歌劇場管弦楽団との7番Herbert von Karajan : Early Recordings, Vol. 3 (1941-1942)、ブラームスでは、19439611日、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団との1番Herbert von Karajan : Early Recordings, Vol. 6 (Amsterdam 1943)の演奏がカラヤンの初出だが、さらに遡って1930年代の音源ながら、意外と「音」が生きており、当時のドイツの録音技術の高さを偲ばせる。
演奏は、さきの2曲同様、カラヤンの「悲愴」はすでにこの段階から、しっかりとモデレがなされていたという感想をもつ。むしろ後年の演奏よりも各楽章でメリハリをはっきりとつけたクリア・カットな演奏である。第1楽章のアダージョの序奏部は暗渠を歩くような不気味な感じを見事にだし、展開部の激烈な爆発力は、第3楽章の行進曲風のパートでも発揮される。第2楽章のエレジーや終楽章の哀切の旋律は、情感豊かに歌われ終結部の感動を誘引する。
ベルリン・フィルをカラヤンがはじめて指揮したのは1938年4月8日であり、カラヤン30才の誕生日の3日後であった。本曲は1年後の収録ながら、これだけ鮮烈にカラヤンの個性を出せるのだから、当時のベルリン・フィルから強い信頼を勝ち得ていたことの証左だろう。 

Herbert von Karajan : Early Recordings, Vol. 3 (1941-1942)
19416月、ベルリン国立歌劇場管弦楽団との7番(ベートーヴェンの交響曲ではカラヤン、現存する最初の録音記録)。圧倒的なスピード感、メリハリの利いた解釈、気力溢れる演奏。しかし、力押しばかりでなく、ときに柔らかく溌剌としたフレーズが心に滲みてくる。天才的な「冴え」である。後日、ベルリン・フィルがフルトヴェングラーの後任にカラヤンを指名した理由がよくわかるような気がする。カラヤンのアプローチの斬新さはいま聴いても褪せてはいない。
 一方で、カラヤンがおそらくはトスカニーニ(1935612日)やクナッパーツブッシュ(1929年)のSP録音およびライヴ演奏をよく研究していたであろうことも本盤から感じとることができる。ディテールを真似するのではなく、4楽章の構成力や大胆なリズム感、加速度的なスピード感の重視といった点で本盤は両巨頭の至芸を十分意識しているようだ。その聴きくらべも一興。

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