土曜日, 12月 31, 2011

謹賀新年 2012年



  新しい年を迎えました。昨年は、ヤニック・ネゼ・セガン、ユリア・フィッシャーなどの新進気鋭の若手、円熟期に差し掛かっているゲルギエフなどをよく聴きました。

古手では、シノーポリ、ミケランジェリ、ミュンシュなどを聴きなおし、作曲家では、上記との関係でリヒャルト・シュトラウス、ショスタコーヴィチなどに耳を傾けました。

先が見えない激動の時代、不条理な大震災への直面などの厳しい来し方でした。もちろんこうした強烈な事象に影響されて、日々に何を聴きたいかも変わってきます。さて、今年は・・・?いまのところ、白紙ですが、本年もどうぞよろしくお願いします。

2012年 元旦

金曜日, 12月 23, 2011

シノーポリⅤ

La Forza Del Destino: Opera House
http://www.amazon.co.jp/Forza-Del-Destino-Opera-House/dp/B000BO0GPO/ref=sr_1_4?s=music&ie=UTF8&qid=1324653294&sr=1-4

シノーポリはぼくの好きな指揮者である。もっと長生きをしてほしかった大指揮者だが、比較的多くの演奏記録が残されていることが慰めである。上記はオペラの名盤だが、オペラ、コンサートものを問わず、その芸域の広さも特質に値する。 

◆シノーポリの名盤


主としてブルックナーやマーラーを中心に聴いてきたが、シノーポリⅣまでではそれ以外の特色ある演奏をいくつか貼り付けてみた。以下はいままでの演奏評など。


◆シノーポリの魅力/ブルックナーについて


ー特に第3番についてー
http://shokkou3.blogspot.com/2008/11/blog-post.html

◆マーラーの全集



ー特に第5番についてー
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC-%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC5%E7%95%AA-%E3%82%B7%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%83%AA-%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%BC%E3%83%83%E3%83%9A/dp/B000I0S8EC/ref=cm_rdp_product


◆サロメについて
http://shokkou3.blogspot.com/2011/03/blog-post_25.html

シノーポリⅣ




【以下は引用】

HMV レビュー

シノーポリ/リスト:交響詩『前奏曲』、ハンガリー狂詩曲第2番、他

SHM-CD仕様

交響詩の創始者として標題音楽の発展に重要な足跡を残した作曲家、リストの管弦楽作品集です。詩人ラマルティーヌの「人生を死への一連の前奏曲とみなす」という序文が付された『前奏曲』をはじめとする3曲の交響詩と、有名な『ハンガリー狂詩曲』第2番を収録。シノーポリ指揮のウィーン・フィルハーモニーによる情感が豊かに脈打つ雄大なスケールの表現に加え、細部にわたる明晰さも兼ね備えた演奏を繰り広げています。SHM-CD仕様。(ユニバーサル ミュージック)

【収録情報】

リスト:

・交響詩第3番『前奏曲』 S.97

・交響詩第4番『オルフェウス』 S.98

・交響詩第6番『マゼッパ』 S.100

・ハンガリー狂詩曲第2(4)番ニ短調 S.3594(ドップラー編)

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 指揮:ジュゼッペ・シノーポリ

 録音:19969月、10月、ウィーン(デジタル)

シノーポリⅢ




【以下は引用】

HMV レビュー

シェーンベルク:月に憑かれたピエロ/期待 ジュゼッペ・シノーポリ

 シェーンベルクの中でもひときわ光彩を放つ、現代に通じる底知れぬ狂気を孕んだ二つの声楽作品。シノーポリは不協和音と叫びの底に横たわる官能性を抽出し、光の下に曝け出しています。カステラーニ、マークの歌も見事です。解説対訳付(ワーナーミュージック・ジャパン)

 【収録情報】

シェーンベルク

(詩:アルベール・ジロー/独訳:オットー・エーリヒ・ハルトレーベン)

1.  月に憑かれたピエロ 作品21-各々7つの詩からなる3部構成 第1部 月に酔って

2.同 コロンビーネ

3.同 伊達男

4.同 蒼ざめた洗濯婦

5.同 ショパンのワルツ

6.同 聖母

7.同 病める月

8.同 第2部 夜

9.同 ピエロへの祈り

10.同 掠奪

11.同 赤いミサ

12.同 絞首台の歌

13.同 斬首

14.同 十字架

15.同 第3部 郷愁

16.同 下劣さ

17.同 パロディ

18.同 月の斑点

19.同 セレナーデ

20.同 帰郷

21.同 おお、いにしえの香り


(詞:マリー・パッペンハイム) 

22.期待 作品17 -モノドラマ 第1場 ここを入るのかしら?…道が見えないわ…

23.同 第2場 これはまだ道なのかしら?…ここにあるわ…

24.同 第3場 あそこに光が射してる!ああ!ただの月だわ…

25.同 第4場 あの人はここにもいない…


ルイーザ・カステラーニ(声)/アンドレア・ルケシーニ(ピアノ)/ドレスデン・シュターツカペレ楽団員/アレッサンドラ・マーク(ソプラノ)*22232425

ドレスデン・シュターツカペレ

指揮:ジュゼッペ・シノーポリ

録音時期:1997年&96

録音場所:ドレスデン

録音方式:デジタル(ライヴ=期待)


§『月に憑かれたピエロ』(仏語:Pierrot lunaire 原題どおり『ピエロ・リュネール』と記されることもある)作品21は、アーノルト・シェーンベルクが作曲した室内楽伴奏による連作歌曲。正式な名称は、『アルベール・ジローの「月に憑かれたピエロ」から21の詩(独語:Dreimal sieben Gedichte aus Albert Girauds Pierrot lunaire“)』。すなわち、アルベール・ジローの仏語詩をオットー・エーリヒ・ハルトレーベンが独語訳したものから21点を選び出し、曲付けしたものである。 

ソプラノの独唱者は、詩の雰囲気を補うために、シュプレッヒシュティンメ様式によって詩を「歌う」。調性は無い。だが十二音技法ではない。シェーンベルクが音列技法を試みるのは、後半生になってからである。 

19121016日に、ベルリンのコラリオンザールにおいて、コロンビーナに扮したアルベルティーネ・ツェーメを主演に迎えて初演が行われた。

シノーポリⅡ




【以下は引用】

HMV レビュー

ヴェーベルン:管弦楽曲集

シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデン


【収録情報】

ヴェーベルン:

・牧歌『夏風の中で』

・パッサカリア Op.1

・管弦楽のための6つの小品 Op.6

・管弦楽のための5つの小品 Op.10

・交響曲 Op.21

・協奏曲 Op.24

・変奏曲 Op.30

 シュターツカペレ・ドレスデン

 ジュゼッペ・シノーポリ(指揮)

  録音音時期:1996

 録音方式:デジタル(セッション)

シノーポリ



【以下は引用】

HMV レビュー

シノーポリ/マデルナ:管弦楽曲集

【収録情報】

マデルナ:

・クァドリヴィウム~4人の打楽器奏者と4つの管弦楽群のための (1969)

・アウラ(気)~管弦楽のための (1972)

・ビオグランマ~大管弦楽のための (1972)

 北ドイツ放送交響楽団

 ジュゼッペ・シノーポリ(指揮)

 録音時期:1979831-94

 録音場所:ハンブルク、ラールシュテット音楽スタジオ1

 録音方式:ステレオ(セッション)

 原盤:DG
 
§ブルーノ・マデルナ(Bruno Maderna, 1920421 - 19731113日)はイタリアの現代音楽の作曲家・指揮者。

 

§クワドリヴィウム

リベラル・アーツが生まれた12世紀においては、学問の世界に入るためのパスポートとしてラテン語の習得が必須でした。

その上で、「トリヴィウム」と「クワドリヴィウム」という2つのカテゴリーが用意されていたようです。「トリヴィウム」とは文法と論理と修辞学の三科をあらわし、「クワドリヴィウム」は天文学、算術、幾何学、音楽の四科をあらわします

中世の大学では学問をするためにまずはこの7科目の習得がリベラル・アーツとして必須だったわけです。

日曜日, 12月 18, 2011

ポリーニⅤ




かつて書いた文章を2つ。

 ポリーニのショパン (ソナタ2&3番)
 Chopin/ Sonata for Piano no 2 in B flat minor, B 128/Op. 35 "Funeral March"  : Pollini, Maurizio (Piano)

 ショパンといえば、古くはコクトー、リパッティ、その後ルビンシュタインやホロヴィッツ・・といった古き良き時代は、ポリーニという一人のピアニストの出現とその強い個性によって大きく塗り替えられたと思う。
 僕の時代の旗手とは、グールドであり、アルゲリッチであり、そしてこのポリーニらであるが、特にポリーニは学生時代から良く聴いている。これは当時の友人O君の影響もあり、理工学部在籍の彼は日がな一日、ポリーニをカセットでかけてせっせとリポートを書いていた。「理科系にうける演奏家かな・・」と冗談で言ったこともあるが、いま確実にそこにあり、しかしフラクタルにたゆたう時代感覚を見事に切開し表象できる技能と直観力をもった天才肌の演奏家なのだと思う。そうした意味では、同じイタリア出身のシノーポリにも共通するものを感じる。こうした演奏スタイルを僕は好きである。

http://freizeit-jiyuu.blogspot.com/2006/07/blog-post_29.html


ポリーニ+アバド / ブラームス ピアノ協奏曲第2番

 

 ポリーニ34歳、アバド43歳頃の1976年の録音である。ウイーン・フィルが馥郁たる演奏で応じている。この盤がでる以前、ウイーン・フィルの演奏によるブラームスの2番のピアノ・コンチェルトに関しては、バックハウス+ベームの歴史的な名盤があった。ポリーニ+アバドを起用したプロデューサーはおそらくこれに拮抗するものを求めたのではないか。バックハウス盤は1967年録音。当時、バックハウスは83歳、ベームは73歳頃の演奏である。枯淡を超えて神々しいまでの演奏に対して、ポリーニ、アバドにはいかにも若き挑戦といった緊迫感がある。
 しかし、いつもどおりポリーニの演奏は分析的で曖昧さのないクリアーな解釈である。音は美しく響くが柔なセンチメンタリズムとは無縁、無機質的では決してないけれど音の陰影の付け方はストイックで常に抑制的である。
 アバドは、ポリーニの一音、一音を大切に浮かび上がらせようと細心の注意を払っている。その神経質なまでの配慮が演奏を締め、これがリスナーに伝わり好ましく思われる。ポリーニ+アバドのコンビは余程相性が良いのだろう。その後、ベルリン・フィルでも同曲をライブで取り上げている。しかし、76年版の重みは、ウイーン・フィルがバックハウスにつづく同曲の名盤を約10年振りに若きポリーニによって世に問えたことにあるのではないかと思う。美しくも様々な思いが横溢した名演である。
 ショパン:ポロネーズ集
(参考)

リストマニア 若き日のポリーニ & アルゲリッチ

土曜日, 12月 17, 2011

ポリーニⅣ




 ポリーニⅢまでの分と重複するが、以下の12枚のCDも興味深い録音が所収されており、要チェックである。 

 全体は4部によって構成されている。1.協奏曲集(CD13)のバックは重厚で、べーム/ウイーン・フィル、アバド/ベルリン・フィル。2.ベートーヴェン(4,5)は中期から後期の秀作6曲を所収。3.シューベルト、ショパン、シューマン、リスト(69)はポリーニの名を不朽にしたメインのレパートリー群だが、ショパンだけに限定するならより廉価、充実した別のボックス・セット(ショパン編9CD)が発売された。4.20世紀音楽集(1012)もポリーニ手中のジャンルだが、ここも限定した廉価の別セット(6CD)が出ている。好みに応じて比較検討されたい。 
  アルゲリッチなどと比較し、本セットはやや割高だが、この編集はポリーニの卓抜な才能を知るうえでよく考えぬかれていると思う。BONUS CDも充実。演奏は現代ピアニズムの一つの頂点を極める高品位、最上等である。 

<収録内容>

1.協奏曲集

CD1:協奏曲集<1>ベーム指揮ウィーン・フィルーモーツァルト:第23(1976)、ベートーヴェン:第5番『皇帝』(1978)

CD2:協奏曲集<2>アバド指揮ベルリン・フィルーベートーヴェン:第3(1992)、第4(1992)

CD3:協奏曲集<3>アバド指揮ベルリン・フィルーシューマン:ピアノ協奏曲(1989) ブラームス:第1(1997) 

2.ベートーヴェン

CD4:ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ集<1>ー第13(1991)、第14番『月光』(1991)、第17番『テンぺスト』(1988)、第21番『ワルトシュタイン』(1988)

 CD5:ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ集<2>ー第29番『ハンマークラヴィーア』(1976)、第32(1977) 

3.シューベルト、ショパン、シューマン、リスト

CD6:シューベルト/ピアノ作品集ーソナタ第20(1983)、アレグレット(1985)、3つの小品D.946(1985)

CD7:ショパン/ピアノ作品集ー練習曲Op.25(1972)、ソナタ第2(1984)、子守歌(1984)

CD8:シューマン&リスト/ピアノ作品集ーシューマン:幻想曲(1973)、アラベスク(1981&1983)、リスト:ソナタロ短調(1989)、悲しみのゴンドラI(1989) 

4.20世紀音楽集

CD9:ドビュッシー&ブーレーズ/ピアノ作品集ードビュッシー:練習曲集(1992)、・ブーレーズ:ソナタ第2(1976&1977)

CD10:バルトーク&ストラヴィンスキー/ピアノ作品集ーバルトーク:ピアノ協奏曲第1番、第2(1977)/ アバド指揮シカゴ交響楽団、ストラヴィンスキー:『ペトルーシュカ』~3つの楽章(1971)

 CD11:シェーンベルク&ヴェーベルン/ピアノ作品集ーシェーンベルク:ピアノ作品集(1974)、ピアノ協奏曲(1988)、ヴェーベルン:変奏曲(1976) アバド指揮ベルリン・フィル

 CD12:ノーノ&マンゾーニ/ピアノ作品集ーノーノ:力と光の波のように(ソプラノ、ピアノ、管弦楽とテープの為の)(1973)、苦悩に満ちながらも晴朗な波(ピアノとテープの為の)(1973) アバド指揮バイエルン放送交響楽団、マンゾーニ:質量(エドガー・ヴァレーズ賛、ピアノと管弦楽の為の)(1980) シノーポリ指揮ベルリン・フィル

 ――――――――――

BONUS CD:ショパン:ピアノ協奏曲第1番(1960年)/ カトレヴィツ指揮ワルシャワ・フィル、シューマン:ピアノ協奏曲(1974年)/ カラヤン指揮ウィーン・フィル

【以下は引用】

HMV レビュー

マウリツィオ・ポリーニ・エディション CD12枚組+ボーナスCD

 審査委員長のルービンシュタインに「すでに我々審査員の誰よりもうまい」と絶賛されたポリーニの凄さを検証できる1960年ショパン・コンクール最終選考のライヴ・テイクと、カラヤン指揮ウィーン・フィルと共演したシューマンという2つの協奏曲を収めた未発表テープによるボーナスCDに注目。ボックス・セットの中身も内容豊富です。

BONUS CD

ショパン:ピアノ協奏曲第1番(1960年)

 カトレヴィツ指揮ワルシャワ・フィル

シューマン:ピアノ協奏曲(1974年)

 カラヤン指揮ウィーン・フィル

どちらも未発表マスター・テープによっています。ショパンは第6回ショパン・コンクール最終選考のライヴ・テイク。ポリーニの歴史的ドキュメントとしても貴重なテイクです。

 組み合わせのシューマンは、ザルツブルク音楽祭におけるライヴ録音で、カラヤン指揮するウィーン・フィルのゴージャスな音響に負けない果敢なポリーニのピアノが素晴らしい聴きごたえ。実演でのカラヤンの迫力も相当なものです。

【収録情報】

CD1

・モーツァルト:ピアノ協奏曲第23(1976)

・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番『皇帝』(1978)

 ベーム指揮ウィーン・フィル

巨匠ベームとは相性の良かったポリーニだけに、ここでの演奏は息も良く合って、迫力といい、旋律美といい申し分の無いクオリティの高さに達しています。

 CD2

・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3(1992)

・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4(1992)

 アバド指揮ベルリン・フィル

ポリーニと最も親密な関係にある指揮者、アバドとのベートーヴェン再録音。前回はベームとの演奏でしたが、今回はアバドが相手だけにポリーニらしい流麗な演奏になっているのが大きな特徴です。

 CD3

・シューマン:ピアノ協奏曲(1989)

・ブラームス:ピアノ協奏曲第1(1997)

 アバド指揮ベルリン・フィル

ブラームスはベーム盤から18年ぶりの録音。前回のような気負い立った表現は影を潜め、流麗かつマッシヴな迫力に富む演奏を聴かせてくれます。シューマンはアバドと共にこの作品の演奏で陥りやすい漠とした響きの問題を払拭したクリアーな快演で、隅々までフォーカスの合った演奏が実に快適です。

 CD4

・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第13(1991) ・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番『月光』(1991) ・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番『テンぺスト』(1988) ・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番『ワルトシュタイン』(1988)

ベートーヴェンの中期作品はエネルギッシュな力強さと率直な抒情に特徴があるといえますが、ポリーニの音楽キャラクターにはそれがとてもピッタリきます。ここに収録された4曲もどれも見事な集中力で弾き抜かれており、ワルトシュタインなどまさに素晴らしい迫力です。

 CD5

・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番『ハンマークラヴィーア』(1976)

・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32(1977)

ポリーニを代表する名盤のひとつ「ベートーヴェン:後期ソナタ集」から2曲収録。どちらもかなりのエネルギーを必要とする作品ですが、まだ30代なかばだったポリーニのパワーは凄いもので、両作品で最も力強い演奏との評価を広く獲得しています。

 CD6

・シューベルト:ピアノ・ソナタ第20(1983)

・シューベルト:アレグレット(1985)

・シューベルト:3つの小品D.946(1985)

穏やかなシューベルト演奏の多い中にあって、ポリーニのそれはほとんどベートーヴェンへのスタンスを思わせる緊張感に富むもので、その意味では作風そのものがベートーヴェン的な傾向を示す第20番のソナタはポリーニにピッタリです。

 CD 7

・ショパン:練習曲Op.25(1972)

・ショパン:ピアノ・ソナタ第2(1984)

・ショパン:子守歌(1984)

ショパンの作品に付きまとうひ弱なイメージを微塵も感じさせない強く整った演奏。テクニックの素晴らしさはもちろん、張り詰めた雰囲気、緊張感には独特なものがあり、ロマンティックなフレーズもここではすべて音響構築への一助として捉えられたような、非常に見通しのよい造形美が痛快です。

CD 8

・シューマン:幻想曲(1973)

・シューマン:アラベスク(1981&1983)

・リスト:ピアノ・ソナタロ短調(1989)

・リスト:悲しみのゴンドラI(1989)

同じロマン派音楽ながら対照的な作風のシューマンとリストの組み合わせ。ポリーニのアプローチはいつも通り怜悧でダイナミック、造型感覚にあふれたもので、ここでもシューマンを迷い無く美しく響かせてくれているほか、リストのロ短調では期待通りの大迫力演奏をきかせてくれます。

CD9

・ドビュッシー:練習曲集(1992) ・ブーレーズ:ピアノ・ソナタ第2(1976&1977)

ドビュッシーのエチュードには具体的な指の運動が徹底して追求されている面白さがありますが、ポリーニの演奏はそうした要求に完璧にこたえた演奏としてあまりにも名高いもの。組み合わせのブーレーズも難曲ですが、近・現代作品に深い理解を示すポリーニにとって、微細な音響の綾は慣れ親しんだ常の世界。ここでも自信に満ちた演奏を聴かせています。

 CD10

・バルトーク:ピアノ協奏曲第1(1977)

・バルトーク:ピアノ協奏曲第2(1977)

・ストラヴィンスキー:『ペトルーシュカ』~3つの楽章(1971)

 アバド指揮シカゴ交響楽団

シカゴ響の音響の個性もあって、ハンガリー系の演奏とはまったく異なる印象が強いここでのバルトークの協奏曲は、多くのファンを持つ見事な演奏です。ポリーニの打鍵の速さ・強さ・小気味よさは、普通のピアニストからは聴けない種類のとんでもないもので、加えてアバド率いるシカゴ響が、民俗性やモダニズムなど意にも介さぬストレートなアプローチで強力なオケ・パートを構築しているから堪りません。最強のバルトークです。

 組み合わせのペトルーシュカ3章は、ドイツ・グラモフォンへの録音第1弾となったもので、瞬発力に富む鋭利な演奏が聴きものとなっています。

 CD11

・シェーンベルク:ピアノ作品集(1974)

・シェーンベルク:ピアノ協奏曲(1988)

・ヴェーベルン:変奏曲(1976)

 アバド指揮ベルリン・フィル

一般的な情動を廃したシェーンベルクのピアノ曲をほぼ網羅したポリーニ盤は、以前からシェーンベルク好きにとってのバイブル的存在として知られていました。ここではピアノ協奏曲とヴェーベルンの変奏曲も併せて収録し、数列・点描といった世間的な感想とは裏腹に、ポリーニがこうした作品にも独特な抒情性が備わっていることを教えてくれます。

CD12

・ノーノ:力と光の波のように(ソプラノ、ピアノ、管弦楽とテープの為の)(1973)

・ノーノ:苦悩に満ちながらも晴朗な波(ピアノとテープの為の)(1973)

 アバド指揮バイエルン放送交響楽団

・マンゾーニ:質量(エドガー・ヴァレーズ賛、ピアノと管弦楽の為の)(1980)

 シノーポリ指揮ベルリン・フィル

現代音楽に造詣が深く、政治運動にも関心のあるポリーニだけに、ルイジ・ノーノの作品を取り上げることは自然な成り行きだったのかも知れません。過激なメッセージを含むこれらイタリアの現代音楽の表現者として、ポリーニの鋭利なピアノが果たした役割は極めて大きなものと言えるでしょう。