金曜日, 5月 30, 2008

ノイマン ブルックナー1番

ブルックナー交響曲第1番ハ短調
ノイマン指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
:1965年12月13-14日、ライプツィヒ救世主教会(ハイランツキルヒェ)BERLIN Classics(輸入盤 0094662BC)

 ブルックナー探訪の面白さは、ときたまこうした逸品に出会えることだと思う。この第1番はワーグナーの影響が強いとも言われるが、第4楽章でベートーヴェンの第9のメロディの一部が垣間見えたり、また、第1楽章では第7と少しく共通するリズムの乱舞があるように聞こえる部分もある。
 ノイマンの演奏は、そうした面白さも反映しつつ、とにかく音が縦横に良く広がる。打者の手前でビヨーンと伸びる変化球のように、聴き手の予想を超えて音がきれいに伸張し、それが次に心地よく拡散していく瞬間の悦楽がたまらない。また、丁寧に丁寧に音を処理していく。第4楽章などに顕著だが繰り返しも忠実に行うなど、ノイマンらしい総じてとても真面目で端整な演奏である。
  それでいて飽きさせないのは例えば第2楽章Adagio( 変イ長調)において、そのメロディの歌わせ方が絶妙でこよなく美しいこと、全般に程良いダイナミズムが持続することにある。陰影の付け方などはかなり工夫もあり、ここは「ベートーヴェン的」に演奏しているのでは・・と思わせるところもある。とにかく嵌って何度も繰り返し聴いている。文句なしの「名演」であり、現状、1番のベスト5に入るといっても大袈裟ではないと思う。感心した。lle.jp/classic/your_best/bruckner_1_neumann_gewandhaus_katayama_20020717.html
(以下、引用)
ヴァーツラフ・ノイマンがライプツィヒ時代に残した録音の中の最も優れたものの一つ、ブルックナーの交響曲第1番が今年(2002年)5月に初めてCDとして発売されました。ローベルト・ハース編纂のリンツ版(1865/66年)による演奏です。
 この演奏の美しさは他に比類を見ません。ホルンはおそらくペーター・ダムが吹いているものと思われます。木管群の純粋な美しさは、例えば同じくドイツの一流楽団とは言えベルリン・フィルでは望むらくもないレベルです。それに交響曲第1番(のリンツ版)はまだ「親切な」取り巻きから色々と口出しされたり、ハンス・リックの執拗な攻撃に曝される前の傷付かずのブルックナーの純粋な感性が良く表われている曲だと思います。それを十分に演奏していると言う点では私の知る限りこの演奏が断然優れていると思います。因みに80年代前半にNHK-FMで放送された大作曲家の時間ブルックナーで土田英三郎氏が当時既に廃盤久しかったこの録音をわざわざ選んだ理由は、私には十分理解できました。
(後略)

月曜日, 5月 26, 2008

ブルックナーの伝記

 このところブルックナーの伝記をまた繰っている。いろんな伝記本を読んでいると、いわば決まったシナリオというか、一定の見方というかが強いとも感じる。おそらく海外の大家の研究家の影響かも知れないが、同じ履歴をなんども見ていると、少し違った解釈もありえるのではないかとも思う。
 伝記とは、対象となる人物に伝記作家自身の投影をみるとも言われるが、ブルックナー研究家はもしかすると少し変わっているところがあるのかも知れない。いやいや!それ以前に、これを書いている自分自身、ブルックナー、そしてその伝記作家と「同類」であり、だからこそ双方に惹かれるのだとも思う。さはあれど、自分が感じるこの「少し違った見方」について、しばらく考えてみたいなというのが一閑人の思いである。

土曜日, 5月 17, 2008

ワルター ブルックナー4番

 ブルックナーの4番をワルターで聴く。コロンビアsoを振った1960年2月13,15,17日スタジオ録音盤ではなく、遡ること20年前のNBCsoとの1940年2月10日のライヴ録音である。これがなんとも面白い。録音はレコードの復刻であろうか、雑音、ヒスが多く「凄まじく悪い」が、この演奏の迫力はそれを凌駕して貴重な4番の記録となっている。

 比較的ヒスが少なく音がきれいに録れている3楽章から聴いてみると良いと思う。このスケルツオのメロディのなんとも暖かな素朴さ、リズムの躍動感、次第に強烈なパッションが表出するオーケストラの高揚感、そしてブルックナー休止そのままの突然の楽章そのもののエンディング。こんな演奏にはめったにお目にかかれない。かってワルター/コロンビアsoの9番でも書いたが、一点の曇りもない明快な解釈に裏打ちされ、しかも緊張感ある迫力十分の4番の名演である。

http://shokkou.spaces.live.com/blog/cns!9E9FE7463122BF4E!937.entry?&_c02_owner=1

 この4番の演奏は、「ロマンティック」といった感傷性とはまったく異質な、「剛」のものの行進であり、晩年の柔らかなワルターのイメージとも一致しない。管楽器は輝かしく咆哮し、ティンパニーの連打は前面で多用されて全体の隈取りはくっきりと強い。
 テンポは全般にはやく(16:44,14:45,8:29,18:48/計58:48)、しかも大胆に可変的である。とても男性的できわめてパッショネイトな演奏とでも言っておこうか。いまでは、評論家が許してくれまいが、原典版、改訂版といった厳密さとは無縁な大指揮者時代の貴重な遺産である。

(参考)

ヘスス・ロペス=コボス ブルックナー6番 

 以前買ったヘスス・ロペス=コボス/シンシナティ交響楽団の6番を聴く。可もなし不可もなしといった演奏。ところどころ、「ここはなかなかいいな」と思うフレーズがある一方で、スウーと緊張感が緩んでいくような凡長な処理もあり、全体に胸打つ演奏とは言えない。
 聴き方の問題かな、と思いヨッフム/ドレスデンを次にかけてみる。違いは歴然。特に第2楽章のアダージョの深さなどは彼我の差は大きい。6番ではこれぞ、という名演に出会う機会が少ない。ロペスに、「あるいは・・・」と期待したが残念ながら<外れ>であった。

(参考)
ヘスス・ロペス=コボス(Jesús López-Cobos, 1940年2月25日 サモラ県トロ - )はスペイン指揮者カスティーリャ・レオン州の出身。マドリード総合大学哲学科にて学位を取得。卒業後にフランコ・フェラーラハンス・スワロフスキーに指揮を師事。
1981年から1990年までベルリン・ドイツ・オペラの総監督に、1984年から1988年までスペイン国立管弦楽団の音楽監督に就任した。1986年から2000年までシンシナティ交響楽団の、1990年から2000年までローザンヌ室内管弦楽団の首席指揮者も担当。2003年からはマドリード王立劇場の音楽監督に転身した。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

水曜日, 5月 14, 2008

ハイフェッツ


 ハイフェッツの映像を以下に。天下の難曲なのに、こうも楽々となんの衒いもなくクールに弾いているように見えるところが大家の証明でしょうか、いやはや凄いなあ・・と思います。
Jascha Heifetz plays Tchaikovsky Violin Concerto: 1st mov.

Jascha Heifetz plays Tchaikovsky Violin Concerto in D Major, Op. 35: I. Allegro moderato *NOTE: This was from a movie, so Heifetz skips Jascha Heifetz plays Tchaikovsky Violin Concerto in D Major, Op. 35: I. Allegro moderato*NOTE: This was from a movie, so Heifetz skips a LOT of the first movement due to time constraints. He skips nearly half of the piece, and so does the orchestra.So please don't ask for second or third movements because I do not have them.You also get to see a bit of Heifetz acting at the end. A great treat!Conductor: Fritz ReinerThis is my favorite rendition of the Tchaikovsky Violin Concerto. I think Heifetz played a bit faster than in his recording.
もっと見たい方のために・・・

日曜日, 5月 11, 2008

映像の魔力

ここ数日、インターネットで名指揮者の古い映像を矢継ぎ早に見ていた。これだけ厖大な映像がタダで、たやすく見ることのできる時代の意味は奥深い。

 かつ
て、巨匠たちの演奏はめったにはお目にかかれず、貴重な記録を映画でみるためにお金を払ってわざわざ映画館に通ったこともある。

 しかし今日、デジタル化された無尽蔵とも思えるこうした動画が、いつでも、なんどでも繰り返し、自宅で思うさま鑑賞することができる。
 往年の名指揮者の指揮ぶりを十分に時間をかけて比較研究することももちろん可能である。クナッパーツブッシュとフルトヴェングラーの「竜虎の戦い」もいろんな角度から見ることができる。映像に撮られているときに、当の指揮者ご本人は、まさかこんな時代がくるとはまったく予測も予感もしていなかったに違いない。
 しかし、今日、職業としての指揮者やソリスト、オーケストラなど音楽界を生業としている人たちは否応なく、こうしたことを当たり前のことと受け取り、常時、気を抜くことなくそれに対応せねばならない。いやはや<映像の魔力>とは大変な時代になったものである。
http://shokkou.spaces.live.com/default.aspx?&_c02_owner=1

火曜日, 5月 06, 2008

織工のレビュー@ブルックナー

織工のレビューでいままでに取り上げた推薦盤は以下のとおり。
http://www.amazon.co.jp/gp/pdp/profile/A185EQOC8GHUCG/ref=cm_aya_pdp_home

 0番から2番まではカラヤン、ヨッフムの全集でもカヴァーされているが、00番ではインバル、ロジェストヴェンスキーを聴いている。
 3番では最近よく聴くクナッパーツブッシュが入っていない。これは名演中の名演。4番ではベイヌム/コンセルトヘボウもあるが、本盤は録音、オーケストラのコンデションともあまりに悪いのでオミットしている。ベイヌムはそれ以外の4曲(5、7、8、9番)はすべて取り上げている。逆に、レーグナーは6番しかあげていないが、ほかの演奏も捨てがたい。
 そうした意味では、ワルターやクレンペラーも同様で、掲載盤以外の他番でも滋味あふれる素晴らしい演奏記録がある。こうして本日現在、進行中のラインナップをチェックしてみると、まだまだ傾聴すべき名盤が多いことに気づく( 太字は★5をつけたもの)。

■0番: ショルティ/シカゴ響

■1番: シャイー/ベルリン放送響

■2番: ジュリーニ/ウイーン響

■3番:①アーノンクール/コンセルトヘボウ
     ②ヴァント/ケルン放送響
     ③ベーム/ウイーン・フィル
     ④クーベリック/バイエルン放送響

■4番:①ベーム/ウイーン・フィル
     ②テンシュテット/ベルリン・フィル
     ③クーベリック/バイエルン放送響
     ④ヴァント/ケルン放送響
     ⑤フルトヴェングラー/ウイーン・フィル
     ⑥クナッパーツブッシュ/ウイーン・フィル
     ⑦ヨッフム/ベルリン・フィル
     ⑧プロムシュテット/ドレスデン国立

■5番:①ヨッフム/バイエルン放送響
     ②ベイヌム/コンセルトヘボウ
     ③フルトヴェングラー/ウイーン・フィル
     ④ヴァント/ケルン放送響
     ⑤クレンペラー/ウイーン・フィル
     ⑥マタチッチ/チェコ・フィル
     ⑦ヨッフム/コンセルトヘボウ
     ⑧クナッパーツブッシュ/ウイーン・フィル

■6番:①クレンペラー/ ニュー・フィルハーモニーカー
     ②フルトヴェングラー/ベルリン・フィル
     ③シャイー/コンセルトヘボウ
     ④ヴァント/ケルン放送響
     ⑤レーグナー/ベルリン放送響

■7番:①マタチッチ/チェコ・フィル
     ②シューリヒト/ハーグ・フィル
     ③ヨッフム/ドレスデン国立
     ④ベイヌム/コンセルトヘボウ
     ⑤ジュリーニ/ウイーン・フィル
     ⑥メスト/ロンドン・フィル

■8番:①クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィル
     ②ベイヌム/コンセルトヘボウ
     ③シューリヒト/ウイーン・フィル
     ④フルトヴェングラー/ベルリン・フィル
     ⑤クナッパーツブッシュ/ベルリン・フィル

■9番:①ベイヌム/コンセルトヘボウ
     ②ヨッフム/ドレスデン国立
     ③ワルター/コロンビア響
     ④朝比奈隆/東京交響楽団

■テ・デウム:朝比奈隆/東京交響楽団

■ミサ曲1~3番:ヨッフム/バイエルン放送響

■全集:①カラヤン/ベルリン・フィル
      ②ヨッフム/ドレスデン国立 

コンヴィチュニー ブルックナー 5番、7番、8番










 
 コンヴィチュニー ブルックナー第8番(1959年のスタジオ録音。ベルリン放送響)はごわごわした感触だがなかなか良い演奏である。
 昨日、いつもの古CD屋で以下の2組を入手する。
■ブルックナー 第5番、第7番(1960年、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団)。5番は2枚組である。
 いずれも<コンヴィチュニーの芸術>シリーズとして、1993年にDENONレーベルから発売されたものだが、いまは新譜や輸入盤でなかなか入手できないもの。しかし、1970年代までのブルックナー受容の我が国の揺籃期、コンヴィチュニーのブルックナーといえば、高い評価があった。これについては、過去、「古き名盤」ほかで記載してきたので以下も参照。さあ、これから聴くのが楽しみである。
(参考)
フランツ・コンヴィチュニー(Franz Konwitschny, *1901年8月14日 モラヴィア北部のフルネク - †1962年7月28日 ベオグラード)は東ドイツ指揮者。著名なオペラ演出家ペーター・コンヴィチュニーは息子である。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー時代のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団ヴィオラ奏者として活動を開始。その後に指揮者に転じて、1927年シュトゥットガルト歌劇場に加わる。1949年から没年まで、ゲヴァントハウス管弦楽団に戻って首席指揮者を務めた。1953年から1955年までドレスデン・シュターツカペレの首席指揮者も兼務。1955年以降はベルリン国立歌劇場の首席指揮者も務めた。1961年にゲヴァントハウス管弦楽団が初来日した時の指揮者でもある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』